工房について

中世イタリアの絵画術の伝統である金箔装飾と卵黄テンペラ画。
ヨーロッパの教会内でもひときわ感動的で輝きを生み出しています。
卵の黄身と顔料のシンプルな絵具でありながら、そこから生まれる世界は色鮮やかであり暖かくおおらかです。
銀座の地より、中世イタリアの金箔装飾と卵黄テンペラの技法をお伝えします。

FOND’OROの由来

工房名の「fond’oro (fondo oro) フォンドーロ」はイタリア語で、絵画の背景に金箔を置く技法のことです。金地を用いた絵画の総称でもあります。工房の原点となる絵画技法がfond’oroなのです。
中世の画家たちは金箔と絵具を巧みに操り、刻印、グラフィート、ミッショーネなどの技法を編み出して、崇高な作品を創りました。その技を自分の眼と手で辿れば、物の奥に在る原理を受け継ぐことができるのです。

金地テンペラ画とは

中世イタリアでは絵具を作るとき、顔料と混ぜる卵や膠などの結合剤(固着成分)を「tempera テンペラ」と呼んでいました。temperaの語源はラテン語の「temperare」で、ある物に何かを適量加えて調整するという意味です。
昔も今も「テンペラ」と言えば、卵黄テンペラの絵具や技法を指すのが一般的です。

卵黄テンペラは乾燥が早くて発色が良い(油彩のように黄変しない)という利点があり、生卵が食器にくっついて乾いたときの頑固な接着力が、テンペラ画の丈夫さを示しています。
板に石膏を塗り、金箔装飾を施し、卵黄テンペラで彩色した金地テンペラ画は、薄暗い教会や室内に天の光をもたらす存在でした。700年前のジョットやシモーネ・マルティーニの祭壇画は現在も光彩を保ち続け、遙かな物語を伝えてくれます。

羊皮紙の彩飾技法

羊皮紙に描かれた絵画とは、どんなものを想像しますか?
言葉を残す紙の歴史は、言葉の歴史であると同時に、色彩と文字による美しき装飾の世界でした。
エジプトのパピルスに次いで、羊・山羊・子牛の皮を薄く加工したもの、すなわち羊皮紙の登場です。
耐久性のある羊皮紙は、聖書や楽譜などの写本及び公文書などに幅広く使用されました。
特に中世ヨーロッパで大流行した時祷書(キリスト教徒のお祈りの本)などでは金箔装飾と壮麗な文字が緻密な世界を織りなしており、いとも華麗な空間へと誘います。

当工房の教室では、羊皮紙にアシーゾ(金箔を置くための下地)を盛って金箔をおき、磨きその装飾性と各自が描きたい世界をコラボさせた絵画作品の制作を目標とします。
伝統の金箔装飾を紐解きながら、ご自身の描きたい感動を自由に作品へ広げて参りましょう。

・羊皮紙に関する詳細は、当工房の友人でもある「羊皮紙工房」をご参照ください。
羊皮紙工房について – 羊皮紙工房 (youhishi.com)